もう一度、『ベートーベンウイルス』…はじまりの交響曲8

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 .2 .3 .4 .5 | 投稿日時 2013/6/13 23:12
hiroko  レギュラー   投稿数: 53

ソクラン〜



春がやって来た。

ゴヌは無事大学に合格した。

指揮科は難関でゴヌ本人は浪人も覚悟していたが、ふたを開ければ

実技、何より副科として演奏したトランペットが群を抜いていた。試験場で皆を圧倒した。

入学早々、金管の教授がゴヌの顔を見に来たため、ゴヌは噂になった。

「指揮科にすごいやつがきた」

当然、ゴヌは質問攻めにあった。

英才教育を受けたわけでも、有名な音楽家に師事してきたわけでもないゴヌに皆興味津々だった。

だが、ゴヌは

「指揮の師匠はカン・ゴヌ・マエストロしかない。」

「音楽など、ちゃんと習ったことなどないし、トランペットは独学だ。」

としか言い様がなかった。

子供の頃から音楽をやって来たものには、ゴヌは特異に映った。

学生の中には、自己流で、教育されていない自由なゴヌをおもしろく思わない者もいた。

ゴヌには馴染め無い雰囲気だった。

昔の仲間に会いたい気持ちなのか、ゴヌは久しぶりにルミを見舞うことにした。

ところが、ルミに会ったとたんルミはゴヌがいつもと違うのに気がついた。

「ゴヌ、どうかした?顔が暗いよ。」

すっかり表情をよまれてしまった。

『見舞いにきたのに、これじゃ、あべこべだ。』今までもルミには、励まされ続けてきた。

現に今も音楽と離れないルミがゴヌには力強く思える。

「勉強疲れ。馴れてないからな。」

ふとサイドテーブルの楽譜に目を落とすと、そこにルミの作りかけた曲があった。

「これは、お前が今作ってる曲?」

話題をかえるつもりでゴヌは聞いた。

ルミは上手くいかなくて机に放り出したままだった。

ワークショップで与えらたのは、企業からの依頼で夏に向けて新商品のための曲だ。

「なかなか、うまくいかなくて。イメージはこれから『恋がはじまるような

わくわくした感じ』を求められているの。恋ったってね。わたしにわかるわけないよ。」

ゴヌはルミを好きだったあの頃を思い出して、チクリと胸にささる。

ルミは自分とカン・マエとの間で迷い、結局選んだマエとも悩みが尽きなかったはずだ。

『お前も恋に不器用だからな。』

そんなゴヌの思いも知ってかしらずか、ルミはため息をついた。

ルミのゴヌへの恋、淡すぎて恋と言えるかどうかわからないが、その恋はゴヌへのすまない気持ちばかりだ。

マエのことを思い出しても、知らず知らず嵐のように巻き込まれていた。

自分の恋だってままならないのに恋のはじまりのわくわくした感じなどわかるわけはない。

曲を書かなければ!という気持ちは起こるのだが、浮かんでも、気分が乗ってこない。




ゴヌはしばらく、譜面を眺めていたかと思うと、

「なんか、堅いな。こうしたら?」

と、横にちょこちょこっと、書き加え、それをルミに手渡した。

それはルミは見がみても、うまい具合にはまっている。

ルミがしっくりいかなかった感じを払拭どころか、数段雰囲気を出している。

『これが才能なのか。』ルミは心がざわついた。

どうして、こんなにあっさりとできてしまう人がいるんだろう。

「ゴヌってさ、わたしが何をイメージしてたかわかるの?」

「ん〜、良くわかんないけど、ときめきみたいな感じだろ。

俺さ、イメージを音符に起こすっていうより、勝手に音のほうが、つながって音楽になってく。

流れみたいなのが出来ていく感じだな。作曲はちゃんと勉強した訳じゃないから、おかしなところがあるかもな。」


ルミはゴヌが音楽の勉強をはじめるのが遅かった分を取り戻そうと誰より努力していることだって知っている。

だが、それだけじゃない。ゴヌの才能は人の一歩を何倍も飛び越えて行ける。

―天才には羽があるのかな―

わたし達が手をかけることさえできない場所を飛び越えていくんだ。

ゴヌを見ていてすこし憎らしく思えた。

ゴヌに嫉妬するぐらいならほかのことをするべきだと思っても

『情けないな…自分はアリのように地面を這いずるしかない。』

ゴヌが帰ったあともルミは曲を作るのを中断したままだった。心はざわついたままだった。

何をしても無駄のような、無力感にとりつかれた。ルミは窓に向かってぼーっと取り留めなく考えた。

急に来室を告げるサインが点灯した。

入ってきたのはカートに何冊も本を運んできたスタッフだった。

どれもこれも、作曲を勉強するのに参考になる専門書だった。中には、韓国では取り寄せないといけないものもある。

「これ、いったいどうしたんですか?」

「それが、誰から送られたのかわからなくて。ルミさん宛に、送られてきました。」

とスタッフも困ったような顔をした。

「送り主がわからない…」

ルミには送り主がわかった気がする。

〜人に優しくする事は弱みを見せるようで、口では決して優しい言葉もかけられない人。〜マエに違いない。

ルミは自分自身の胸に熱いものが流れてくるような気分だった。

言葉はなくても、遠くにいてもマエの思いを感じた。

「何も言わないつもりなんですね。先生。」

結局本が送られた以外マエからの連絡は以降も何もなかった。

 

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koguma  レギュラー   投稿数: 959
ルミ、ゴヌは、カンマエですら嫉妬する程の天才なんだから、仕方ないよ(^-^;)



ゴヌの指揮者デビューを見てみたいし、そうなってからの師匠カンマエとの再会を見てみたい〜〜

そしてカンマエの横で、世界中に向かって「わたしを育てたのはこのカン・ゴヌ マエストロだ。この方がいなければ僕はいなかった。世界最高の指揮者はすなわち、カン・ゴヌ マエストロだ」と叫ぶ姿を見てみたい!



ルミはカンマエから、愛の言葉を聞ける日が来るかなぁ

あ、聞こえないんだ・・・感じる事は出来るよね。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/15 21:44
hiroko  レギュラー   投稿数: 53
カン・マエから愛の言葉聞きた~~いですね!(>▽<)
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/21 17:53
yuson  管理人   投稿数: 3020

ゴヌが譜面にちょこちょこっ。。と書き込む姿、表情が
 目に浮かびま〜す^^

ゴヌの感性を充分に発揮して素敵な指揮者になってほしいです。

無力感に取りつかれたルミの心を
沢山の専門書に込められたカンマエの心が
一歩前へ導いてくれるといいな。。

 
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hiroko  レギュラー   投稿数: 53
才能って、無いものからしたら本当にねたましい…
その、才能を見せ付けられても、
『くさらず、努力する』
なかなかできないことですが、やれてこそ
それも才能ですよね。
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yuson  管理人   投稿数: 3020
hirokoさん こんにちは〜 

ほんと、そういう才能もありますね^^

<くさる>か<努力する>か

どちらを選ぶかで その先が、大きく違ってきますね☆
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